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近視抑制治療 低濃度アトロピンについて

[2023.09.17]

今回は低濃度アトロピン点眼の治療についてです。

 

アトロピンの効果

アトロピンという薬は、抗コリン作用を有する薬物です。具体的にはアセチルコリン受容体を競合的に阻害することで、副交感神経の作用を抑制し、交感神経を優位にするため、胃腸管の運動抑制、心拍数の増大などの作用があります。また唾液、気管支粘膜、胃液、膵液などの分泌を抑制します。有機リン剤中毒の治療にも使用され、地下鉄サリン(有機リン系化合物)事件では被害者の治療薬の一つとして用いられました。

 

眼科では最強の調節麻痺剤として、小児の内斜視のメガネ合わせの際に1%アトロピン点眼を使用したり、研修医時代(約20年前)は硝子体術後の散瞳キープのために術直後に1%アトロピン点眼を1滴使ってました。(散瞳効果が約1週間持続されるので、診察したいときに散瞳状態でしっかりと眼底が見える)また硝子体手術時の眼球圧迫時に、迷走神経反射のために心拍数が30台とかかなりの徐脈になるケースがあって、その場合は注射のアトロピン製剤を使用しておりました。(心拍数を上げる効果があります)

ということで、このアトロピンという薬は、さまざまな場面でお世話になってきましたが、近視の抑制に効果があるいうことで、眼科の中では最近はトピックとなっております。

 

アトロピン点眼の効果

なぜ近視を抑制する効果があるか、はっきりとわかっておりませんが、通常の点眼液である1%アトロピン点眼で近視抑制があることがわかりました。しかし通常の濃度では羞明(まぶしい)副作用が強く、濃度が薄くなったもので試されるようになり、シンガポールでのATOM2研究で0.01%アトロピン点眼を使用した人と、使用しなかった人を比較したところ、近視の進行を約60%軽減させる結果となりました。

日本においての研究(ATOM-J)では2年間で0.01%アトロピン点眼は近視進行を抑制し、眼軸延長を抑制したが既報より効果が少ない結果となりました。なので日本国内において0.01%アトロピン点眼は疑問視する声も聞かれますが、小児において近視を抑制する、手軽で、リスクの少ない、有用な治療がないことも確かです。

当院ではより近視抑制が期待できる0.025%アトロピン点眼薬である0.025%マイオピンを推奨しております。このアトロピン製剤ですが、日本において保険適応があるアトロピン点眼製剤はないため、海外からの輸入品を自由診療で用いることが一般的となっております。

 

 

 

低濃度アトロピン製剤であるマイオピンの特徴

・重篤な副作用の報告はありません。

・近視の進行を平均約60%軽減させるといわれています。

・毎日必ず就寝前に一滴点眼するだけの、非常に簡単な治療法になります。

・本製品はGMP(医薬品製造管理及び品質管理基準)準拠の工場で製造されています。

 

どのような子供に向いているのか

・両親が高度近視の方

・6歳~12歳の学童の方

・軽度または中等度の近視の方

 (特に小学校低学年で近視と診断された方は早めの治療を勧める)

・眼軸が年齢の割に長いお子さん

 

費用について

・自由診療になりますので、費用がそれなりにかかります

・0.025%マイオピンは1本3800円です。1本で1か月分となります。

・まずは1か月使用していただき、副作用がないか確認します。

・副作用がなければ、その後は最大3か月分購入できます。

・保険診療と同日に購入はできません。

・別途検査代金 3000円/回かかります

 

 

その他 注意事項

・この点眼をしても近視は治りません。

・近視の進行を完全に抑える薬ではなく、進行を抑制する可能性がある薬です。

・最低2年間、できれば中学校終了くらいまでの長期間使用することを勧めます。

 

最後に

 眼軸が伸びてから(体が成長してから、大人になってから)の点眼薬使用、その他の対策などは効果的とは言えません。

 両親が高度近視のお子様(遺伝的要因)、ゲーム・スマホ・漫画・お勉強と近業作業時間が長いお子様(環境的要因)、学校検診で昨年はよかったが今年は引っかかったお子様、近視が心配な方などは早い段階での点眼治療や、近業作業を少なくする意識付け、外での遊び時間を増やすなど対策をとることを勧めます。

 

 

 

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